埼玉・久喜市に本社を置く「さくら観光バス」が、9月4日運行の大阪と東京を結ぶ夜行バスの空調故障を理由に、乗客10名を京都駅に急遽降車させ、そのまま置き去りにして行ってしまったことが物議を醸しています。
この記事では、問題となった「さくら観光バス」の社風に関すること、また、当日乗車していた被害客の話をもとに、「さくら観光バス」の不誠実さについて追っていきます。
さくら観光バス「安全は最大の顧客満足」
2022年9月4日、埼玉・久喜市に本社を置く「さくら観光バス」が、大阪から東京を結ぶ夜行バス「ミルキーウェイエクスプレス110便」で、乗客を置き去りにして、その場を去るという事態を引き起こしました。
当日22:10運航当初から、空調が冷えないという異常があり、急遽京都駅で当日乗客10数名を降車させ、新幹線代を負担することを条件に、一方的に “運行不能” として乗客を置き去りにしたため、被害に遭った人たちは怒りの声を上げています。
今回このようなトラブルを巻き起こした「さくら観光バス」とはどのようなバス会社なのでしょうか。
「さくら観光バス」のホームページを覗いてみたいと思います。
こちらが「さくら観光バス 株式会社」のホームページです。
(出典:さくら観光バス HP より)

(出典:さくら観光バス HP より)
さくら観光バスは安全評価制度三ツ星優良事業者です
貸切バス事業者安全性評価認定制度にて、埼玉県に300社以上あるバス会社の中でも、限られた事業者にしか認定されていない三ツ星優良事業者に認定されています。私達は、これに満足することなくお客様が安心して、快適にバスに乗れるよう取り組んでいきたいと思います。
「さくら観光バス」は、 “三ツ星優良事業者” に認定されていることを強調しています。埼玉県にある300以上のバス会社の中でも限られた “三ツ星優良事業者” が「置き去り」を起こしました。
こちらが、夜間バスの「ミルキーウェイエクスプレス110便」で、当日使用されたバスになります。このバス車内の空調が効かなかったことが事の発端です。
こちらは、「さくら観光バス」の会社概要の中に記載されている内容です。
(出典:さくら観光バス HP より)
【所在地】
本社営業所
〒346-0104 埼玉県久喜市菖蒲町三箇2470-1
TEL:0480-48-7720
FAX:0480-48-7944東京営業所
〒121-0831 東京都足立区舎人1丁目21-15
TEL:03-5647-6139
FAX:03-5647-6539上尾営業所
〒362-0064 埼玉県上尾市小敷谷854誠勇ビル206号室
TEL:048-729-6721
FAX:048-729-6722千葉営業所
〒270-0115 千葉県流山市江戸川台西二丁目152番地1階2号室
TEL:04-7199-3766
FAX:04-7199-3767
【営業区域】 埼玉県・東京都・千葉県・茨城県古河市・猿島郡五霞町
【代表取締役】 天野 正幸
【事業内容】 一般貸切旅客自動車運送業/一般乗合旅客自動車運送事業
【登録】 関自旅一第1661号/国自旅第90号
埼玉県に本社を置き、関西には営業所はありません。営業所の無い関西で運行するリスクは考えていなかったのでしょうか。
こちらは、「さくら観光バス」の “安全基本方針” です。
(出典:さくら観光バス HP より)
さくら観光バス株式会社 安全基本方針
安全は、最大の顧客満足
関係法令を遵守し、安全第一で乗客の輸送を行う。
防衛運転・交互の精神にのっとり安全運行に努める
無理な運行は、しない、させない
「さくら観光バス」の方針には、『安全は、最大の顧客満足』というポリシーがあるようです。
『無理な運行は、しない、させない』が、 “置き去り” の暗示だったのでしょうか。
こちらは、「さくら観光バスの約束」というページの一部分です。
(出典:さくら観光バス HP より)
この追求に終わりはありません。さくら観光バスは絶えず新たな可能性に挑戦することを皆様にお約束します。
お客様の快適
私達は、お客様が快適にバスに乗れることを追求することをお約束します。
運転の仕方によってお客様の乗り心地は大きく左右されます。お客様が快適に乗れる運転を全ドライバーが心がけ、研修制度も整えています。
お客様の安全
私達は、安全面に対して最新の取り組みを行うことをお約束します。
さくら観光バスでは、いち早くGPSシステムを取り入れ、本部では『どの車が、どの道を、何キロで』走っているかが一目でわかるようになっています。安全に運行することは当然として、些細な変化を察知し対応することが、大きなトラブルを回避することにつながっています。
さくら観光バス置き去り被害客の話「誠意のない対応サービスの質以前の問題」
当日乗客として乗り合わせていた “バイオハザード2最強攻略wiki” さんが、「ねとらぼ」の取材に答えていました。その取材を元に、当日の様子を追っていきます。
「乗客を深夜の街に降ろして置き去りにして逃げた」夜行バス乗客がトラブル報告 バス会社「適切な処置だった」と弁明
乗客「誠意のない対応だと憤りを感じている」 [上代瑠偉,ねとらぼ]
(出典:ねとらぼ より)
● 9月4日22時10分 大阪・難波発、9日5日6時10分東京・池袋着のバスだった
乗車直後から、エアコンの状態が思わしくなかった。「なんだかエアコンの効きが悪いな」
● 大阪~京都間 運転手からアナウンスが入る
「空調設備の調子が悪いため停車する」
● 京都着 京都の乗り入れ客を乗せた後、運転手&乗務員の話し合いがあり、その後このようなアナウンスが入る(約20分間待機 時刻:23時55分)
「車内空調不備のため運行中止、朝になるまでお待ちいただき、各自で東京へ向かってください。新幹線の運賃は後日、負担します」(「バス会社が費用を負担するだろうから」というニュアンスであったともされている)
● 降車させられて行くあてに困る10名が抗議 運転手に詰め寄る
乗客:「深夜なので新幹線はもう終わっている。宿代などは出ないのか?」
運転手:「宿代は出せない」(一点張り)
● 警察官2~3人が駆け付ける
ヒートアップした乗客を警察官が囲い込んでなだめる
● 深夜0時50分ごろ、運転手&乗務員が警察官が対応しているスキに、逃げるように発車して行ってしまった
取り残された乗客同士で後で連絡を取り合えるようにLINEグループを作成して解散する。それぞれホテルやカラオケなどへ。”バイオハザード2最強攻略wiki” さんは、近くのネットカフェで仮眠を取って朝を待った。
【以上、当日時系列】
“バイオハザード2最強攻略wiki” さんが撮影した当時の動画です。
「ねとらぼ」が、”バイオハザード2最強攻略wiki” さんに会社側や乗務員の対応について問うと、「誠意のない対応だと憤りを感じています。乗客を深夜の街に降ろして置き去りにし、挨拶もなく逃げるように立ち去るというのはサービスの質以前の問題だと思います」と答えているようです。
さくら観光バスの主張「ある程度、適切な処置だった」置き去り否定
「ねとらぼ」は、さらに運行元であった「さくら観光バス」に問い合わせを行い、担当者との話ができたことを明かしました。
「さくら観光バス」の主張はこのようになっています。
● 当日状況の「さくら観光バス」の見立て
乗務員から「エアコンの調子が大変悪い」と連絡があった。室温が35度を超え、車内は満席で37人のお客様がいた。運転手と乗務員を含めて39人いる。「そのまま運行していいのか?」という相談を受けた。熱中症や体調不良を起こす可能性を考慮して “運行中止” を判断した。
● 大阪に営業所がない
埼玉から京都まで向かわせると、約10時間かかってしまうという事情があった。
● 返金対応をした
乗客にバス代金(8500円)に加え、社の誠意として+αで渡した。「新幹線や他社のバスをご利用いただけないか」とお願いした。東京に到着する人には(バス代金を含めた総額で)1万5000円、埼玉行きの人には+1000円をしないといけないと判断して(バス代金を含めた総額で)1万6000円を渡した。
● 宿代を渡すのは難しかったか?
個人差があるため、難しい。
● 乗客は納得していたか?
最善の努力をしたつもりだったが、その思いが伝わらなかった(そういう客が1人いたと聞いている)。警察はその客が呼んだと聞いている。乗務員からは「パトカーも来ていたようですね」ぐらいの報告だった。とくに警察からの指示などはなかった。
※ 乗客の “バイオハザード2最強攻略wiki” さん曰く、警察を呼んだのは乗務員。乗務員が「会社も警察を呼んで良いと言っている」と言い警察を呼んだ。
● 運転手や乗務員がバスに乗って無言で立ち去ってしまったことが物議になっている
説明しない限り客がバスを降りることはない。返金もしたし、荷物もトランクから出したので、 “置き去り” という表現は適切ではない。
● コミュニケーションにも問題があったのではないか
昼は数多くいるが、夜は1~2人の体制でやっているので、1人1人にメールや電話をできなかったのだろうと想像する。ある程度、適切な処置だったと思う。
【以上、さくら観光バス 発言】
「さくら観光バス」としては、今回の対応は「適切な処置」だったと当初言及していました。ただ、乗客の証言と “警察官” に関する話が食い違っているところからも、事態を運行会社の都合のいいように捉えている感じが出ていました。
その後、9月7日に「さくら観光バス」側からこのような文章が発表されました。
ミルキーウェイエクスプレス110便車両故障について
9月4日(日)CJ110便におきまして、エアコン空調設備の不具合により車内の温度が下がらなくなり、お客様の体調と安全を考慮し運行を停止し翌日にご移動して頂く事案が発生致しました。
ご迷惑をお掛け致しましたお客様にはお詫び申し上げます。
【状況】
始発の大阪難波を出発し京都駅に向かい、走行中に車内温度が上昇した為、京田辺PAにて一時停車し状況を確認。応急処置を行い出発したものの不具合は解消せずに、京都駅到着時に車内温度が33~34度前後より下がらない状態となった為、ご乗車のお客様の体調を考慮並びに、換気機能の停止によりコロナウイルスのクラスター予防を考慮して運行を中断し、お客様へは翌日移動して頂き移動費用相当を送金させて頂く形を取りました。
【車両状況】
車検・定期点検及び9月3日に行った空調メンテナンスでは異常は認められず。
9月5日に営業所に戻り、ディーラー・メンテナンス業者と共に原因調査中。
ご乗車頂きましたお客様へご迷惑をお掛け致しました事を深くお詫び申し上げます。
今後この様な事の無いよう点検整備を行ってまいります。
ミルキーウェイエクスプレス
さくら観光バス株式会社
株式会社旅クラブジャパン
(出典:さくら観光バス HP より)
こちらは、「さくら観光バス」の謝罪文となるようですが、深夜に移動手段が無いのに降ろされた乗客たちの「宿泊」に関する記述がないのは、論点を避けている “不誠実さ” を感じさせる内容となっています。
また、9月3日に空調メンテナンスで異常なしだったとされていますが、運行当日にタイミング悪く故障するものなのでしょうか。故障を見抜けないほどのメンテンナンスだったのではないでしょうか。どちらにせよ、会社の都合でしかありません。
さらには、乗客が乗り入れるまで、車内にいた運転手と乗務員は、空調が冷えてないことに気づかずにいられるのでしょうか。気づいていてそのまま突入した形だったのではないでしょうか。
そもそもがバス会社の問題であるのに、乗客に対する議論の末、 “置き去り” と思わせる形でその場を離れることが、 “三ツ星優良事業者” がする対応なのか疑問です。
埼玉の会社が、事業所の無い関西で深夜運行することのリスク。「安全は最大の顧客満足」と謳っている割に、運行以外の安全については保証しない対応に、「さくら観光バス 株式会社」の不誠実さがにじみ出ています。