静岡県小山町須走の県道「ふじあざみライン」で大型観光バスの横転事故を起こした、野口祐太(のぐちゆうた)容疑者(26)の勤務状況や、乗務を共にしたことがある添乗員からの話で、働きぶりや評判などが明らかになりました。
この記事では、美杉観光バス運転手、野口祐太容疑者の、バス事故に関する真相についてまとめていきたいと思います。
野口祐太美杉観光バスの評判「煽り危険運転が常態化」ふじあざみライン横転事故
野口祐太真相「美杉観光バスは辞めるつもりだった」コロナ禍での転職
『文春オンライン』の報道で、野口祐太容疑者が、清水照康副社長から慰留されて、美杉観光バスにとどまっていたことが明らかになりました。
吉田典弘社長の顔画像は公表されていますが、現時点では、清水照康副社長の顔は公表されていません。
(出典:美杉観光バス HP より)
野口祐太容疑者の勤務期間は、1年3カ月ほどであると、吉田典弘社長が記者会見で説明していました。
その、入社1年足らずの野口祐太容疑者が、副社長である清水照康氏に、辞職したいという旨を伝えていた経緯があったことが明らかになりました。
(出典:文春オンライン より)
野口祐太容疑者は、稼ぎの悪さを理由にしていて、その意向に対し、清水照康副社長は、クラブツーリズムの乗務で「稼げるから」という口車で引き留めていました。
結果、 “ふじあざみライン”での大事故につながってしまいました。
美杉観光バスの元社員の証言で、 “ふじあざみライン”の運転の難しさが語られていました。
(出典:文春オンライン より)
美杉観光の元社員もこう明かす。
「事故のあった『ふじあざみライン』は無料で通行できますが、その分急勾配でカーブもあって重量のある観光バスで走行するのは危険なんです。断っている大手バス会社もあると聞いたことがあります。同じ富士山五合目へいく道でも、有料の富士スバルラインとは全く異なります。いくら定期収入になるからといって、こんな危ないルートをタイトな行程で受けるなんて、会社として正しい判断とは思えません。

バスは10月13日午前11時40分ごろ出発。約10分後、約5・5キロ先の右カーブを曲がりきれず、道路左側ののり面に乗り上げて横転した。関係者によると、出発後の数分は制限速度(時速30キロ)を保ったが、徐々に速度を増し、事故直前は約90キロまで加速していた。
関係者によると、ジェイクブレーキは、エンジン内のシリンダーに閉じ込められた空気を排出して車両の速度を低下させる「圧縮開放ブレーキ」の一種。男性はサイドブレーキやエンジンブレーキに加え、この補助ブレーキも試みたが、フェード現象の発生とともに1分以上高速状態が続いたことなどから、いずれのブレーキも十分な効果を得られなかったとみられる。
野口祐太の観光バス「初めて乗るには無理がありすぎた」クラブツーリズム専用特殊車両



さらに事故を起こしたバスはクラブツーリズム専用の“特殊車両”だったという。事故車両に乗務経験のある別の添乗員B子さんが解説する。
「通常の観光バスは11列か12列で40席以上あります。しかし事故のあったバスはクラブツーリズム専用で9列36席。乗用車と同じ3点式のシートベルトで、電動リクライニング付きです。後部には化粧台付きの立派なトイレもありました。
運転をするにしても、通常の車両とは重心や重量感が違うようでした。美杉観光は飯能車庫に入れていた事故車のほかにもう1台、板橋車庫にも同様の特別車を持っています。板橋車庫のバスも数年前にブレーキトラブルがあったと添乗員の間で情報共有されています」
この特殊車両は、クラブツーリズムから仕事を受注するための大きな売りだったという。外装もクラブツーリズム仕様になっていた。
「お客さんの乗り心地がいいですからね。クラブツーリズムから年間の契約が取れれば、会社には継続的な収入になります。秋はバスツアーのかき入れ時ですが、どうしても夏や冬は減ってしまうので、大手と年契約を結ぶのは観光バス会社にとって大きな収入源になるんです」(同前)
野口祐太運行ルート「こんな行程初心者にムリ」クラブツーリズムの詰め込み
野口祐太容疑者の運転乗務を経験したことのある、添乗員のA子さんが、事故当日のクラブツーリズムの行程の過密さについて指摘していました。
(出典:文春オンライン より)
A子さんは事故について「絶対に起きてはならない」と厳しく批判しつつも、「野口くんにも責任はありますが問題はそう単純ではない」とも続けるのだ。
「まず、あのコースを設定したクラブツーリズムに過失があると思います。クラツーのコースは、JTBなどと比べると低価格な割に、いろんな立ち寄り場所があって“お得”なんです。一方で無理な行程があるのも事実。ネット上にも書かれている通り、あのコースを通る行程表にもかなり無理があったように思います。
ベテランのドライバーさんだったら多少遅れても『いつものことだ』と慌てませんが、今回初めてあのコースを担当した若手の野口くんにとっては到着予定時間に次の目的地に間に合わないことにかなりの焦りを感じていたんじゃないかな……。プレッシャーから、運転操作がおろそかになってしまったのかも知れない」(同前)
こちらが当日の行程表です。

(出典:クラブツーリズム HP より)











野口祐太評判「頼もしい若手ドライバー」バス運転手は念願
先ほどの添乗員A子さんが、野口祐太容疑者のことを “いい運転手”であったことを明かしました。
(出典:文春オンライン より)
「野口くんはいいバス運転手でしたよ」
そう語るのは、クラブツーリズムのツアーに多く添乗してきた添乗員のA子さんだ。発着地は異なるが、野口容疑者が運転する美杉観光バスでの乗務経験もあるという。
「普通、観光バスの運転手は道を間違えてもUターンをしないんです。お客さんを不安にさせるし、道を間違えたなんて恥ずかしいミスがバレたくないというプライドもありますからね。だから別の道を通ってうまく修正する。
ですが美杉観光のドライバーは平気でUターンします。運転手としてのプライドが育っていない。添乗員の間では『ブラックすぎて人がいつかないから、経験のある運転手がいないせいだ』と有名ですよ。
でも、そのなかで野口くんは違っていました。彼自身から聞いたのですが、野口くんは元々バス運転手になりたくて大型の免許を取り、トラック運転手からキャリアを始めたんです」
野口容疑者にとってバス運転手になることはかねてからの夢であり、目標だった。物を運ぶトラックと比べ、人を運ぶバスの運転手には大きな責任とともにやりがいを感じていたようだ。
「その後、念願叶って都内の大手バス会社に転職したのですが、コロナ禍で運転の機会が少なく、経験を積めないからと地元埼玉の美杉観光に移った。念願の観光バス運転手になれたからか、仕事にはとても熱心に取り組んでいました。嘱託のベテランドライバーに道を聞くなど下調べは欠かさなかったし、一緒に勤務した際には『今日のコースはしっかりと聞いてきたんで大丈夫です』と頼もしいことを言ってくれたこともありました。私たち添乗員としても、本当に成長してほしい若手ドライバーさんでした」(同前)
野口祐太容疑者は、そもそもバスの運転手になりたくて、大型の免許を取得し、トラック運転手を経てから、バスの運転手になったといいます。
念願が叶ったのが、東京の大手バス会社への入社でしたが、コロナ禍の影響を受けて仕事が減った中、運転機会を求めてたどり着いたのが、地元埼玉の美杉観光バスでした。
美杉観光バスに勤務し始めてからは、勉強熱心なところを見せるなど、期待の若手だったことがわかります。
美杉観光バスの先輩ドライバーがするようなマナー違反なども、しないようにしていた誠実な姿勢が感じられます。
このような真面目で熱心な野口祐太容疑者すらも、のちに給与の面で不満を口にするくらいですから、よっぽど美杉観光バスの待遇がひどかったことの裏付けにもなります。
その美杉観光バスのヤバさをさらに際立たせている事実も明らかになっています。
添乗員A子さんが、美杉観光バスの、デジタルタコメーターの改ざん指示についてこのように明かしています。
(出典:文春オンライン より)
前出のA子さんは取材にこうも明かした。
「バス運転手が疲弊したまま乗務をしないように、乗務と乗務の間には決まった時間を空けるよう法で定められています。ですので、バス運転手が乗務している時間は『デジタルタコメーター』で記録するんです。
ですが、野口くんはツアーが終了して乗客を降ろすとタコメーターを外していました。本来は車庫に戻るまでつけておかないといけないものなのですが……。ですが、美杉観光に乗務を詰め込まれていたので、時間をごまかさないと次の乗務に間に合わなかったようです。会社からも外すよう指示をされていたようです。野口くんは『これって絶対にやばいですよね』と言っていました」
静岡県警が事故原因について捜査を進める一方、国交省は美杉観光バスを特別監査している。運行や運転手の勤務実態などについても調査を進めている。
美杉観光バスは、勤務時間をごまかすために、デジタルタコメーターの取り外しを、野口祐太容疑者に指示していたといいます。
野口祐太容疑者が、A子さんに「これって絶対にやばいですよね」と確認しているところから、本意ではなかった気持ちが汲み取れます。
このような美杉観光バスの扱い方に、新人の野口祐太容疑者も疑問を抱えていたことがわかります。
いかに会社が、従業員に対して、都合のいいようにしか仕向けていなかったことが明白です。
容疑者立会いの下の実況見分の際には、野口祐太容疑者は、深々と頭を下げて、犠牲となった乗客の命に向けて追悼の意を表していました。
(出典:静岡放送 より)
野口祐太容疑者のことを語る証言者の言葉を耳にして、事故現場に向かって一礼する野口祐太容疑者の姿は、偽りないものと感じられます。
バスの運転手になりたくて、美杉観光バスにたどり着いた野口祐太容疑者の夢を、最悪の事故で傷つけてしまった、管理会社の責任が、ますます問われることになっていきます。
野口祐太美杉観光バスの評判「煽り危険運転が常態化」ふじあざみライン横転事故